技術を価値に変える資金の設計力 ― エンジニアのためのプロジェクト・ファイナンス入門
このコースはデルフト工科大学のオープンコースウェア、「 Project Finance: Funding Projects Successfully 」を翻訳し、日本語字幕をつけたものです。
大規模な技術プロジェクトやインフラ事業において、プロジェクトの成否を左右する重要な要素の一つが、資金の調達と配分です。どれほど優れた技術や構想があっても、資金がどのように集められ、どの段階で、どこに投入されるのかが適切に設計されていなければ、プロジェクトは前に進みません。エンジニアが関わるプロジェクトにおいても、技術的判断は常にコスト、契約、リスク、スケジュール、そして投資家や発注者の期待と結びついています。
本コースはプロジェクトの資金調達と価値創出を軸に、エンジニアに必要なプロジェクトマネジメントの考え方を学ぶプログラムです。とくに、プロジェクトの初期段階における意思決定が、資金調達のしやすさや将来的な価値にどのような影響を与えるのかを重視しています。
コースでは、プロジェクトマネージャーやチームの役割を理解するところから始まり、ステークホルダーの関与、リスクの整理、契約やインセンティブの設計へと進みます。これらはすべて、資金を引きつけ、守り、効果的に使うために不可欠な要素です。
さらに、価値をどのように定義し、評価し、説明するのか、コストやスケジュールをどのように見積もり、資金計画と結びつけるのかといった、ファイナンスに直結する視点も段階的に扱われます。
単なる理論紹介にとどまらず、インフラや建設分野を含む技術プロジェクトの事例を通して、資金調達とプロジェクト運営がどのように結びついているのかを具体的に学べる点も本コースの特徴です。
■ 本コースの構成
前半: プロジェクトファイナンスの基礎と意思決定
- まず、プロジェクトマネジメントの重要性を確認し、財務分析や資金調達の意思決定を通して、プロジェクトとファイナンスの関係を理解します(モジュール1)。
- 次に、プロジェクトファイナンスの特徴と、その仕組みが発展してきた背景を学び、従来型の資金調達との違いを把握します(モジュール2)。
- さらに、リスクマネジメントの基本を学び、収益リスクや遅延・建設・運営に関わるリスクをどのように管理するかを理解します(モジュール3)。
- 加えて、プロジェクトの法的枠組みや融資契約、コンセッション契約を通して、資金調達を支える契約構造を学びます(モジュール4)。
- 最後に、モデルを用いた資金調達支援の方法を学び、これまでの知識を統合して、現実的な資金調達の検討ができるようになります(モジュール5)。
プロジェクトを「技術の集合体」としてではなく、「資金と価値が動く仕組み」として捉える第一歩として、本コースは確かな土台を提供するでしょう。
受講対象者
本コースは、以下のような方におすすめです。
- 技術プロジェクトやインフラ事業に関わるエンジニアで、資金調達やコスト構造を体系的に学びたい方
- プロジェクトの初期段階における投資判断や資金計画に関心のある技術者
- 設計・施工・運営などの立場から、ファイナンス視点でプロジェクト全体を理解したい方
- 将来的にプロジェクトマネージャーやリーダーとして、資金面を含めた意思決定に関わりたい方
- プロジェクト・ファイナンスや経済評価に初めて触れる学生・若手社会人
特段の専門知識は不要です。一般的な技術プロジェクトの流れに関する基礎的な理解や基礎的な数学知識があればスムーズに学習できます。初学者でも無理なく取り組める構成になっています。
学習目標
このコースを通じて、次のような力を身につけることを目指します。
- プロジェクトの資金調達が、技術的・組織的な意思決定とどのように結びついているかを理解する
- プロジェクト初期における判断が、投資家や資金提供者の評価に与える影響を説明できるようになる
- コスト見積もり、スケジュール、リスク管理を資金計画の視点から捉え、整合的に考えられる
- 契約やインセンティブの設計が、資金の流れやプロジェクトの実行可能性に与える影響を理解する
- 経済評価を含むプロジェクト実行計画(PEP)を作成し、資金と価値を統合した計画を立案できる
| モジュール 1. ファイナンスの基礎 |
|---|
| 1.1 財務分析 |
| 1.2 資金調達の意思決定 |
| モジュール 2. プロジェクトファイナンスの特徴と発展 |
| 2.1 プロジェクトファイナンスの特徴 |
| 2.2 プロジェクトファイナンスの発展理由 |
| モジュール 3. リスクマネジメント |
| 3.1 リスクマネジメント入門 |
| 3.2 収益リスクの管理 |
| 3.3 遅延・建設・運営に関するリスクの管理 |
| モジュール 4. 法的枠組みと契約 |
| 4.1 プロジェクトの法的構造の基本 |
| 4.2 プロジェクト融資契約(ローン契約) |
| 4.3 コンセッション契約とは |
| モジュール 5. 資金調達を支えるモデルの活用 |
| 5.1 モデルを用いた資金調達のサポート |
|
翻訳ボランティア
謝辞
本コースの日本語翻訳は、下記のボランティアの方々の全面的なご協力によるものです。ここに厚く感謝申し上げます。
(50音順)
天野史子様、大本 茉弥様
木村咲良様、近藤出保様
中尾あき子様、中山可南子様
野島 由美様、福永芳子様
古木仁様、宮内理都子様
山田健彦様
謝辞
本コースの日本語翻訳は、下記のボランティアの方々の全面的なご協力によるものです。ここに厚く感謝申し上げます。
(50音順)
天野史子様、大本 茉弥様
木村咲良様、近藤出保様
中尾あき子様、中山可南子様
野島 由美様、福永芳子様
古木仁様、宮内理都子様
山田健彦様
Tu Delft(デルフト工科大学)
オランダ最古の工科大学で、ヨーロッパでも非常に高い評価を受けている名門校。土木工学、建築、航空宇宙学などがとくに有名。大学のロゴはギリシャ神話にある「プロメテウスの炎」を表しています。
https://www.tudelft.nl/
オランダ最古の工科大学で、ヨーロッパでも非常に高い評価を受けている名門校。土木工学、建築、航空宇宙学などがとくに有名。大学のロゴはギリシャ神話にある「プロメテウスの炎」を表しています。
https://www.tudelft.nl/

