ウランバートルでは高層ビルが立ち並ぶ一方で、子どもたちの遊び場は少なく、歩道、保育施設などの公共施設も後回しにされています。鉱業ブームが経済成長と高級住宅の需要を生んだものの、生活基盤は置き去りに。2021年に新規建設許可は停止されましたが、すでに承認されたビルは今も建設が続いています。

日中は窓やシャッター、カーテンを閉じ、夜には空気を通すために窓を開ける――猛暑の中でも室内を快適に保つ工夫は、ちょっとした知識と工夫で可能です。水で湿らせたシーツや床、冷凍ボトルを使った扇風機の冷却効果、「煙突効果」を活かした空気の流れづくり。さらに、植物の蒸散作用や電気機器の使用制限も温度管理に効果的です。

バンコクの建築家コッチャコーン・ヴォラーコームさんは、気候変動対策を都市設計の中心に据えることで注目を集めています。彼女が手がけたタマサート大学の屋上は、棚田のような構造で作物を育てながら雨水を貯め、洪水も防ぎます。「過剰消費ではなく、私たちの暮らし方を変えること」。屋上の緑が、持続可能な未来へのヒントを届けています

中国で暮らすジャオ・ホンチャンさんは、バリアフリーの現状を可視化するために街を記録しています。傾いた歩道、不完全なスロープ、使いづらい交通機関。それは日常にある“見えない壁”です。学校や職場でも困難は多く、当事者の姿が表に出にくい状況が続いています。それでも、少しずつ社会は変わり始めています。

ナイジェリア北東部で、10万人以上が暮らしてきた避難民キャンプが閉鎖され始めています。「故郷に帰れる」と喜ぶ声の一方で、依然として武装勢力の影が残る地域への帰還に不安も募ります。生業や流通が回復していない町では、再出発もままなりません。不確かな未来へ、荷造りを終えた人々が静かに歩み出そうとしています。

コンクリートに覆われた都市が変わりはじめています。ニューヨークの屋上農場、香港の高層ビル、デンマークのLED農場、そして砂漠に挑むリヤドの植林計画。多彩な取り組みが都市の未来を変えつつあります。都市と自然のつながりを再び取り戻す時代がやってきています。気候変動への対策の鍵は、足元の緑にあるのかもしれません。

都市やその周辺に根づく農業は、食料供給だけでなく、環境保全や教育、雇用にも貢献しています。屋上温室やシェア菜園、垂直農場では野菜や果物だけでなく、食用花や家畜の飼育も可能です。藁や培地を用いた栽培法からハイテク農業まで、多彩な技術が都市を支える新しい「農」のかたちを提案しています。

高齢化が急速に進むタイでは、60歳以上の人口が1,200万人を超え、年金は月わずか900バーツ。物価高の中で食事を切り詰め、必要な医療用品さえ借金で賄う人もいます。2029年には人口の5人に1人が65歳以上に達する見通しですが、社会の備えはまだ整っていません。静かに深刻化するこの課題に、誰もが無関係ではいられません。

都市の持続可能性を高める「緑のデザイン」が、世界各地で進化を遂げています。ビルの屋上農園や縦型農場、街路を結ぶ緑の回廊は、気温の上昇を抑え、大気中の汚染物質やCO₂の吸収にも効果を発揮しています。都市の緑化は、食料供給の仕組みにも変化をもたらし、農地の再生や環境保全の可能性を広げています。

シエラレオネの首都フリータウンでは、海を埋め立てて住まいを築く「バンキング」が、都市の過密問題への苦肉の解決策となっています。タイヤやごみ、土嚢を重ねた上に建てられた家々は、洪水や火災にさらされ、水道や排水といった基本的なインフラも不十分です。人口の3分の1がスラムに暮らす都市で、生活の場は海へと押し出されているのです。